思い立ってホクロを取りに行ったレポ
目元のホクロは涼しげな印象を与え、口もとのホクロはセクシーでミステリアスな印象を与える。
たかがホクロ、されどホクロ、小さな黒点の一つや二つで人の雰囲気は随分と変わるものだ。
しかし、魅力的な位置にばかりホクロがあれば良いのだが、そうはいかないのが世の常である。
大きいホクロ、数が多すぎるホクロなどは生きていく上で全く役に立たないどころか、ホクロのせいで嫌な思いをすることもしばしばある。
かくいうみなみも身体の大きなホクロに悩む一人であり、ムダ毛を剃る際など無駄にホクロに気を使う生活を送っていた。
ムダ毛処理だけならまだ良いのだが、昨年から通っている脱毛クリニックではホクロのせいで脱毛が行えない部分がある始末。
何とか卒業までに邪魔なホクロを取っておきたいという思いは日に日に強まるばかりであった。
思いは強まり続け、ついに9月30日夜、O塚美容整形外科に予約を入れた。
本州の方ではS川スキンクリニックがホクロ取りで有名らしいが、生憎札幌のクリニックではホクロ除去の施術は行っていないとのことだった。
そして来る本日10月4日、みなみはO塚美容外科の入り口を潜ったのであった。
「お名前よろしいですか―」
院内に足を踏み入れるか踏み入れないかのタイミングで受け付けのお姉さんから声がかかる。
食い気味すぎへん?と思いつつも、予約していた旨を伝えると、問診票などを渡された。
ロビーで問診票に記入している間、院内のテレビではサスペンスが延々と流れていた。
もっと血なまぐさくない番組を流してほしかった。猫ちゃんが戯れてる映像とか。
問診票などに記入を終えたらすぐに医師のいる部屋へ通された。
あいさつもそこそこに取りたいホクロを見せる。
さすが美容外科の医師だけあり、数秒ホクロを見ると、合点したようにうなずいた。
その後、問診票に目を通す。
「この、25歳で学生と言うのは……」
「大学院の2年です。」
本日一の即答だった。
先生にそんな気は全く無かったと思うが、「25歳でまだ学生なの!?」と言われたような気がした。完全に被害妄想である。
あぁなるほどね、と先生は言い、早速施術の説明に入った。
「まずホクロの除去というのは2種類の方法があり……」
問診票の裏にホクロ除去の方法を図や文字で描いて説明してくれたのだが、文字が全く読めない。ミミズかアラビア文字かと言わんばかりに読めない。
何度か見直してみたがやっぱり読めない。
何とか図と説明を頼りに先生の話を要約するとこうである。
・レーザーでホクロを削り取る方法とメスでホクロと皮膚を切除する方法がある
・レーザーはホクロが再発する恐れがある(O塚では5年以内の再発したホクロは無料で取ってくれるらしい)
・大きいホクロを取る場合レーザーは施術跡が白く残る可能性がある
・術後の幹部は紫外線に当てないよう気をつけねばならない
・切除だと抜糸の為に再度来院する必要がある
レーザーか切除どちらにするか考えてみてください、と言い残し先生は去った。
その後別室で改めてカウンセラーの人に料金などを聞き、結局レーザーで取ることに決めた。
ちなみに5mmほどのホクロ2つ取るのにレーザーだと75600円、切除だと97200円だった。
貧困層のみなみにとって、24000円の差はあまりに大きかったのである。
(仮に跡が残っても問題ない部位だった、抜糸の為に来院するのが面倒だった、なども理由ではあるが)
その場で料金を払うと、手術の同意書にサインをし、すぐに施術室へ通された。
部屋の真ん中に手術台のような簡易ベッドのようなものがあり、その上には手術室にありそうなライトがあった。
言われるがままにベッドに寝てみたが、急に身体の一部を取り除くことに対して恐ろしさが湧いて来る。
実はこのみなみ、痛いのが非常に苦手であり、22歳の頃看護師さんに「痛くないからねー^^」と励まされながらインフルエンザの予防接種を受けた経験のある猛者である。
ベットの上で震えていると、施術室の看護師さんは不安を感じ取ってくれたのか、「麻酔だけちょっとチクっとしますけど、それ終わったら全然痛くないしすぐ終わりますよー^^」と教えてくれた。
やっぱりどこの看護師さんも優しい。
やがて先生が入ってきて、施術が始まった。
さて麻酔はどんな痛みかと震えていたが、少しチクリとした痛みが数秒間続くだけで、予防接種程の痛みはなかった。
取りたいホクロ2つに麻酔をした後、間をおかずに先生がレーザーのような機械を握る。
麻酔って効くまで時間置くんじゃないの!?とパニックになっている間にもレーザーの先端はどんどん近づいてくる。
ついにレーザーがホクロへと触れた。
拍子抜けするほど痛みはなかった。
今レーザーが触れているのかどうかも分からない程だった。
「やっぱ身体でもホクロって気になるの?」
先生がトークを交えてくる程度には和やかに施術が進む。
気になるから取りに来てるんや!!!と思いつつも、「イヤ、ムダ毛剃る時とか気になって……」と答えておいた。
先生は「あーね。」と言う感じの相槌を打ち、1つめのホクロの施術が終わった。
トークタイムを挟む必要があったのかと思うほど短い施術時間だった。(5分程度)
続いて、2つめのホクロの除去に移る。
2つめにもなるとこちらの緊張もほぐれており、「イヤー本当にすぐ終わるんですね~」などと言う余裕も出てきた。
ホクロにレーザーを当てながら先生が言う。
「大学でどんな研究してるの?」
何故5分かかるかかからないかの施術中にそんな重めの質問をしてくるのか。
「私理系で~~おいもを茹でて潰した時にどの段階からマッシュポテトと呼べるのかって感じの研究をしてます~~(※)」
と答えておいた。
※研究内容の開示は個人の特定に繋がる恐れがあるため、一部脚色しております
先生はまたもや「あーね。」という感じの相槌を打った。
看護師さんが引き継ぎ、「うちの院で施術する学生さん、理系が多いのよね~」といった話を振ってくれた。
正直その詳細がめちゃくちゃ聞きたかったが、そのタイミングで施術は終わった。
施術後の患部を見せてもらうと、ホクロのあった部分だけが綺麗に陥没していた。
ここにテープを貼り、2週間ほど軟膏を塗り続けると再び皮膚が盛り上がってきて平らになるとの事だった。
先生は足早に施術室を出ていき、看護師さんが今後のケアの説明をしてくれた。
術前に言われた事が殆どで、
・テープを貼り、1日2回テープの上から軟膏を塗る事
・紫外線に当てないように気を付ける事
・患部周辺の脱毛は半年後ぐらいを目安に
・テープの代わりに傷パワーパッドを貼ると治りが非常に遅くなるのでやらない事(ネットの情報を信じてで傷パワーパッドを貼る人が続出しているらしい)
といった内容だった。
看護師さんに見送られて施術室を出、そのまま院を後にした。
そういえば診察券みたいなものは作らなかったなぁとエレベーターの中でふと思った。
時計を見てみると、院に足を踏み入れてから出るまで40分も経っていなかった。
こんなにお手軽にホクロが取れるなんてすごいぞ現代医療。
社会人になったら顔の小さいホクロも順次取っていこうと誓った10月4日の夕方であった。
~終~