ママチャリ遠征レポ~みなみとくさきょーの小樽遠征~
2014年7月某日。テスト勉強に疲れたみなみとくさきょーは生産性の無い会話を垂れ流すだけの機械となっていた。
テストが終わったらあのアイスが食べたい、あそこへ行きたい、等々話題は尽きず、一般的な女子大学生の姿がそこにあった。
テスト期間中において、テスト期間終了後に思いを馳せる事は最高の快楽だ。
みなみもくさきょーも例外なく快楽に身を委ね、テスト期間終了後の計画を立てに立てた。もちろん、この計画のうち1つか2つでも実行出来れば御の字である。
しかし、この計画の中でも1番ハードなものが今回実行されてしまった。
そう、「ママチャリで小樽まで行く」である。
実はくさきょーは1度チャリ小樽を経験しているのだが、その時は時間が遅かったせいであまり小樽を満喫できずに終わってしまったようなのである。
そしてみなみは最近人気のマンガ、弱虫ペダルを読み自転車へのモチベーションが高まっていた。
昼の小樽を満喫したいくさきょーと、とりあえず自転車でどこかへ行きたいみなみ、利害の一致であった。
2014年8月20日午前10時、待ち合わせ場所である定食屋の前にみなみは相棒のママチャリ(2013年4月にホームセンターで購入、9800円)と共に立っていた。
装備はジーンズ(ユニクロで購入)にシャツ(しまむらで購入)、パーカー(ユニクロで購入)、リュック(しまむらで購入)である。何らかのアクシデントで駄目になっても大丈夫な服を選んだ結果こうなった。
普段からユニクロやしまむらばかり着ている訳では無い。断じて無い。
1年生の頃クラスの男子に裏で「アイツ全身ユニクロだぜw」と笑われていたみなみさんがいたらしいが、それは同姓同名のよく似た別人だろう。あの野郎絶対に許さん。
みなみの到着の数分後にくさきょーも相棒のママチャリ(緑色、泥除けに駐輪場のシールが貼ってある)と共に到着した。会話もそこそこにルートを確認、飲み物を調達していざ出発である。
ルート確認といっても地図を読むスキルも低く情弱気味のみなみはチャリ小樽経験者のくさきょーの後をただ付いていくだけであった。本当にくさきょーには頭が上がらない。
出発して30分、まだまだ市街地からは抜けず、ひたすら西へ西へとペダルを回し続けた。八軒、発寒、手稲……この辺りはあまり急な坂もなく、雑談をしながら順調に進んでいけた。
手稲区のゆるキャラ、ていぬ君が地面に描かれていたのは中々シュールであった。
出発して1時間もすると市街地を抜け、工業地帯に突入した。
連続した坂こそ無いものの、いくつかの上り坂を経て早くもみなみは体力を失っていた。気温はそう高くないはずなのに流れ出てくる汗、太腿に張り付くジーンズ。不快指数が上昇していくのを感じた。
工業地帯を抜けた頃にはもはやペダルを回すだけの寡黙な仕事人となり果てた。
しかし、風景はコンクリートジャングル育ちの人間の心を潤す自然あふれるものとなっており、みなみはこれだけでもペダルを回し続けた甲斐があったと思った。ちょろい女である。
そうこうしているうちに、遂に銭函までたどり着いた。何だかんだで小樽までの道のりの半分を制覇したのである。
銭函駅周辺は自然豊かで、山も川もありとても美しかった。
この美しい自然が牙をむいて襲い掛かってこようとは誰が想像しようか?
銭函駅を通りすぎて数分もしないうちにみなみは絶望に打ちひしがれた。坂、坂、漕げども漕げども坂が終わらない。
常日頃からアイスを食べて碌に運動もせず、無駄な肉を蓄えた足は山に屈服するしかなかったのだ。
自転車を押して歩けば移動速度が格段に落ちる。かといって自転車に乗ればペダルが回らない。ここが一番の難所であった。
結局自転車に乗る道を選んだみなみであったが、頭の中では弱虫ペダルの挿入歌が延々と流れていた。挿入歌が流れてもペダルを回す速度は全く変わらなかった。
最近のスポーツマンガでは若者の人間離れが進んでいるようであるが、ママチャリでロードバイクに匹敵する速度で上り坂を登る高校生もこの例には漏れないようである。
何とか山を越え、満身創痍となったみなみとくさきょーは休憩欲が格段に高まっていた。そんな時に目に入ったのが「あいすの家」という看板であった。
奇しくもみなみとくさきょーはアイス同好会幹部である。と言うか創設者である。
そんな我々が「あいすの家」に反応しないという事が許されるだろうか?いや、許されない。
ネオジム磁石に引きつけられる鉄屑のようにみなみとくさきょーは「あいすの家」に入った。
みなみはコーヒーフロートを、くさきょーはアイスソフトを注文し、休息を取った。
アイスというチートアイテムを摂取し、体力と士気が大幅に回復したのを感じた。
Twitterへのアイステロも完了し、みなみとくさきょーは再び足を動かした。
高まる士気はどんどんペダルを回す。流れる汗も不安定な天候も気にならない。
ひたすら西へ進み、出発より2時間、遂に小樽築港へと到着した。
小樽を夢見て山道を進んできたのだ。そして何より、小樽築港駅にはファッションセンターしまむらがあった。
みなみのテンションは上がらざるを得なかった。
しかし、小樽築港は「小樽」と付いているものの本来の目的地である小樽駅ではない。
目前にまで迫った目的地に向けてみなみとくさきょーは市街地を駆けた。
市街地は銭函周辺ほどではないものの上り坂がきつく、まさに最後の試練であった。
小樽はよ!小樽はよ!という会話をしながらペダルを回し、回し、小樽駅にたどり着いた。
出発より2時間45分、長い長い道のりであった。
自転車置き場に自転車を止め、弾かれるように小樽の街へとくり出した。
アイスクリームを食べ、コロッケを食べ、アクセサリーショップやガラス細工の店を見て回り、ソフトクリームを食べ、とにかく食べ歩いた。
みなみが店員さんに外国人と間違われる謎のイベントもあったが、とにかく楽しかった。
余談ではあるがみなみが旅行先で外国人に間違われるのは3回目である。
小樽を満喫し、時刻は16時45分。
帰りは下り坂が多いとはいえ、2時間はかかるだろうとの判断から小樽を出発した。
あっという間に小樽築港を通過し、山道に入ったがここも殆どが下り坂であった。
長い長い下り坂で、みなみは身体を倒した方が風の抵抗が少なくなって自転車のスピードが上がるという事を身をもって体験した。気分は御堂筋翔である。
一か所緩やかな長い上り坂はあったものの、銭函周辺の坂を乗り越えた我々の敵ではない。順調に進み、札幌市へと突入した。
順調すぎて特筆すべきことが無いレベルに順調であった。
あえて書くとするなら、行きには山岡屋が一軒しか無かったのに帰りには二軒あったことぐらいだろうか。
道が違うのだから当たり前である。
何はともあれ小樽を出発して2時間15分、みなみとくさきょーは北大へと帰還した。
移動時間総計5時間、移動距離約70kmの長旅であった。
くさきょーと別れ、家へと帰り着いたみなみは泥のように眠った。
机の上では、リュックからはみ出たパンフレットの、「札幌・小樽間は電車で最速32分!」の文字が輝いていた。
~総評~
気温が23℃と低く、天候も曇りだったことから今回はあまり熱中症の心配をしなくて済んだが、夏に行くなら熱中症の事も考慮すべきであろう。
ジーンズは風通しが悪いうえに汗で張り付いて不快なのでいっそジャージで行くのが良い。
合羽を忘れた。今回は雨に降られることは無かったが、持って行くべき。
車線の関係上行きと帰りで違う道を通らざるを得ない。帰りに道を間違えないように気を付けよう。
先導してくれたくさきょーさん本当にありがとうございました。とても楽しかったです。